整骨院(接骨院)は、柔道整復師法に定める柔道整復師が施術を行う施術所とされています。
柔道整復師は、医師ではありませんが、歴とした国家資格者であり、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などの損傷に対し、手術をしない「非観血的療法」によって、整復・固定などを行うことができます(骨折・脱臼の施術は原則として医師の同意が必要)。
交通事故の関係で言いますと、追突事故等によっていわゆる「頸椎捻挫」、「腰椎捻挫」の傷害を負われた方が、整骨院での施術を受けるケースが見られます。
一般に、病院や医院では、より重症のケースに力を入れているため、頸椎捻挫等のケースはあまり熱心に治療していただけない場合があるようです。
他方で、整骨院では頸椎捻挫等に対して熱心に取り組んでいるようですので、事故被害者の方が整骨院を選択されることも理解できます。
しかしながら、整骨院の治療費が高額になった場合、加害者側の保険会社が、「整骨院通院の必要性・相当性がなかった」、「事故との相当因果関係がない」などとして争ってくる事例も少なくありません。
このような整骨院の治療費に関しては、
「症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向がある」
とされています。
また、裁判官の論文において、整骨院の施術費につき、
のいずれかの要件を満たせば損害と認められるとの見解(※1)が提唱されています。
よって、できれば医師の指示を得るか、医師の同意の下に整骨院に通院することが望ましいでしょう。
もっとも、現在治療を受けている医師に「今後は整骨院に行きたいです」などとは言いづらいという理由で、医師に黙って整骨院に転院されるケースもあるようです。
そのようなケースでも、整骨院での治療効果が上がっていれば、損害として認められるということになります。
最近の裁判例を見ますと、
例えば、
東京地方裁判所・平成26年2月28日判決(LLI/DB判例秘書搭載)は
「△△整骨院への通院については、医師の指示はないが、前記1で認定した事実経過によれば、原告の症状緩和に効果的であったことが認められるから、本件事故と相当因果関係を認めるのが相当である」
と判示しています。
また、
福岡地方裁判所平成26年1月15日判決(LLI/DB判例秘書搭載)は
「C整骨院における上記施術自体に不合理な点はなく、また、訴の施術期間も不相当に長期にわたっているとはいえないから、これに要した費用は、原告主張事故と相当因果関係のある損害というべきである」「B整形外科医院の医師が整骨院での治療を指示した事実はないが、原告主張事故により原告が負った障害の内容及びこれにより原告が訴えていた症状に照らすと、その施術内容及び施術期間が合理的な範囲内にとどまる限り、医師の指示がないという事実のみを理由として整骨院での施術の必要性が否定されることはないというべきである。」
と判示しています。
このように、医師の指示がない整骨院の施術費用も、施術の効果が上がっていれば損害として認められる例が多々あります。
もっとも、裁判で良い認定を受けるためには、整骨院で作成する「施術証明書」に、どのような施術をしたか、どのように効果があったか、等を具体的に記載して頂く必要があるでしょう。
なお、整骨院通院に当たって考えておかなければならないのは、「柔道整復師には診断書作成はできない」ということです。
後遺障害の申請には「後遺障害診断書」が必要ですが、これは医師のみが作成できるものであり、柔道整復師には作成できません。
長い間整骨院だけに通院されていた方が、突然病院や医院に行って「後遺障害診断書を書いてください」とお願いしても、断られる場合が多いでしょう(強くお願いすれば書いて頂ける場合もありますが、確実ではありません)。
よって、将来的に後遺障害が残りそうなほどひどい頸椎捻挫であれば、「整骨院だけ」ではなく、整形外科の病院、医院にも定期的に通っておいた方が良いでしょう。
なお、医院と整骨院に並行して通院していた場合でも、そのことだけを理由にして整骨院通院の必要性が否定されるものではありません。
この点、上記福岡地方裁判所・平成26年1月15日判決では
「原告は、C整骨院通院と並行してB整形外科医院においても通院治療を受けていたものであるが、両者の治療及び施術は、それぞれ西洋医学的手法及び東洋医学的手法に基づいて鎮痛効果を求めるものであるから、これらが並行して行われているというだけで、いずれか一方の治療効果を否定することはできない。」
と判示されております。
※1 近藤宏子「整骨院等における施術費の認められる範囲」赤い本1995年版
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