交通事故の加害者が任意保険に入っている場合、被害者の怪我の治療費等については、加害者側の保険会社が病院に直接支払うことが通常です。
保険会社は、加害者との契約上、加害者のために「示談代行サービス」を行うことになっており、これに基づいて加害者に代わり治療費等の支払いを行うのです。
ところが、治療開始後一定の期間が経過すると、保険会社の担当者から被害者に対して「そろそろ治療の必要性が無くなってきたのではないですか」、「そろそろ治療を終了すべきではないですか」などという働きかけがなされることがあります。
特に、頸椎捻挫、腰椎捻挫等のケースでは、治療開始から3ヶ月後、及び6ヶ月後ころを目途に、「これ以後は治療の必要性がないので、治療費は払いません」などと通告してくる場合が多いようです。
ひどいときは、保険会社の担当者が、主治医の先生に一言の聞き取りもせずに、一方的に「打ち切り」を言い渡してくることもあります。
保険会社が、頸椎捻挫等のケースについて、事故後6ヶ月以内を目途に「打ち切り」を持ち出してくるのには理由があります。
実は、頸椎捻挫等について、事故後6ヶ月以内に治療を終了し、「症状固定」としてしまった場合、後遺障害が認定される可能性が非常に低くなってしまうのです。
世の中には、事故後4~5ヶ月間通院治療をして、未だ治療の必要性があるのに、保険会社の担当者から「打ち切り」を示唆されて泣く泣く治療を終了する被害者の方が沢山おられます。
そのような方が、主治医から「後遺障害診断書」を書いてもらっても、後遺障害はまず認められません。
本来、6ヶ月以上通院して後遺障害も認められるべきであるのに、保険会社の圧力に屈したばかりに後遺障害も認められず、低額の賠償しか受けられなくなるのです。
このような保険会社の手口に対抗するためには、被害者側も賢くならなければなりません。
そもそも、「治療の必要性」とは、主治医の先生が医学的に判断することであって、保険会社の担当者が左右できるようなことではありません。
よって、主治医の先生が「引き続き治療する必要性がある」と認めて下さる限り、治療は続けていただいて構いません。
もっとも、保険会社は「打ち切り」後の治療費は払いませんので、被害者の方がいったん手出しで払う必要があります。
その上で、後日、本当に治療の必要性がなくなった時に、主治医の先生と話し合って、「症状固定」の時期を決定し、保険会社に対しては「事故時~症状固定時(保険会社の打ち切り時ではない)」の期間の治療費を請求するのです。
もちろん、加害者側の保険会社は「打ち切り以後の治療費は払わない」と言って抵抗 して来ますが、これに対しては訴訟を提起し、主治医の先生の「意見書」を証拠提出して争えば、裁判所は主治医の先生のご意見を採用することになります(主治医意見書の内容が正当であれば、ですが)。
当事務所では、多数の事件において、上記のようなやり方で、保険会社に「打ち切り」後の治療費を認めさせています。
なお、(残念なことですが)主治医の先生が交通事故の実務に詳しくない場合、「保険会社の治療費打ち切り時点で症状固定にしなければならない」と勘違いされているケースがあります。
そのような場合には、主治医の先生に
という認識を共有していただく必要があります。
このあたりの事情については、被害者ご本人が主治医の先生に申し上げても、なかなかご理解いただけないかも知れません。
従って、実務に詳しい弁護士等の専門家が被害者に代わってご説明した方が良い場合もあるでしょう。
当事務所はこの種の説明を何度も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
保険会社が治療費を打ち切った後は、被害者がいったん自腹で通院をする必要があります(その金額を、後で加害者側に請求します)。
この際、手出しの金額を少なくするため、健康保険を使用した支払いに切り替える、というケースがあります(打ち切り直前まで、保険会社が健康保険不使用で支払っていた場合)。
ところが、(残念なことですが)主治医の先生が交通事故の実務に詳しくない場合、「健康保険を使用した時点で症状固定にしなければならない」と勘違いされているケースがあります。
こういうケースでも、上記4と同様、主治医の先生に「健康保険の使用と症状固定時期は別問題なのです」旨ご説明する必要があります。
健康保険を使うかどうかは被害者の都合で決めることですし、症状固定の時期は医学的な見地から決定することで、関係はありません。
当事務所はこの種の説明も何度も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
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