交通事故により後遺障害を残した場合、後遺障害がなければ得られるはずだった収入(給料や自営業の利益など)を得られない場合があります。
このように、事故によって得られなくなった利益のことを「逸失利益」と呼んでいます。
赤い本によれば、後遺障害逸失利益については
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数によるライプニッツ係数
という算定方式により計算するものとされています。
「基礎収入」は、被害者の年収などにより算定します。
「労働能力喪失率」は、労働能力のどれくらいの部分が、後遺障害により失われたか、という割合を示す概念です。
「労働能力喪失期間」とは、ご本人が事故に遭っていなければ、後何年くらい働けたか、を示す概念です。赤い本では、原則として67歳まで働けるものとして計算します。
「ライプニッツ係数」は、将来受け取るべき金額を前倒しで受け取るに当たり、その間の利息を控除するために用いられる数値です。
例えば、「50年後に受け取る筈だった100万円を今受け取る」という場合に、「50年分の利息を差し引いて受け取る」ことが公平と考えられますが、そういう計算のために用いる係数とご理解ください。
例えば、40歳で年収500万円のサラリーマンのAさんが事故にあって右腕の骨を骨折し、右手首の関節の可動域が半分以下になってしまったので後遺障害第10級10号が認定されたとしましょう。
この場合、
「基礎収入」は、原則として500万円を採用します。
「労働能力喪失率」は、「第10級」については、「27パーセント」と評価されています。
「就労可能年数」については、40歳から67歳まで27年間働けるものとみなします。
もっとも、将来の27年間で稼ぐはずのお金を現時点で一括で取得すると、そのお金を定期預金等にして利息を得ることにより「貰い過ぎ」となるため、調整のための数字として「ライプニッツ係数」を用います。
Aさんの場合、就労可能年数である27年に対応するライプニッツ係数は「14.6430」となります。
以上から、Aさんの死亡による逸失利益は
500万円 × 0.27 × 14.6430 = 1976万8050円
となります。
以上では、死亡逸失利益の計算について大雑把な説明をしましたが、「基礎収入」、「労働能力喪失率」、「労働能力喪失年数」、「ライプニッツ係数」といった概念について、より詳しく知りたい方は、下記の項目をクリックしてください。
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